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2018-02-02

静物油彩デモンストレーション 前半

静物油彩プロセス その1


この絵は美大受験における油彩画の基本を分かってもらうために私=田所がデモンストレーションしたものです。

F15号です。

20180128_155202切り取りのコピー4 60      20180130_222854 縮小




しかし、油絵を描く初学者にとっても参考になるメッセージとなる幾つかのエッセンスが盛り込まれています。

最も大事なことは、目の前にあるモチーフを写真的にただ写すのではなく、"絵作りをする”ということです。

もっと言うと、目の前にある物を、そのまま“らしく描く”のではなく、目の前にある物のレッテルを取り去り、名詞性を剥奪し、絵という世界観の中に記号化する、ということ。

モチーフに作家が従属するのはなく、作家が主体となること。さらに言えば、絵という器の中に各モチーフが融解し、各々が絵の一部になりきる、ということです。

言葉でお伝えするのは少し難しいですね。

しかし、このベーシックな経験からもっと本当の意味での写実絵画にも向かうことが出来るし、抽象やイメージ画にもすんなりと移行することが出来うる、

いわば絵の初期的段階における“プラットフォーム”になるプラクティス(練習)なのです。



具体的にそのプロセスを見て行きましょう。


① まず最初は単色でデッサン的に描いていく作業です。 私はまあ安直かもしれませんが、最も便利なウインザーニュートンのペインズグレーを用いています。

20180128_155202切り取り60


 この色は非常に便利な色で、最初のおつゆ描きでも、途中段階でのグレージング(透明色がけ)にも用いることが出来ます。
 代替品としては、同じ会社から出ているデイビーズグレーというのもあり、綺麗な半透明色です。(透明色に近いかもしれません。)

この段階では水墨画や木炭デッサンをするくらいの気持ちで描きます。 

細部の表情などもある程度追って、見栄えがするくらい描きます。

筆は最初は大きな豚毛を使って、後から細いセーブルなどを使用します。

最終的にペインティングナイフで厚く盛り上げるパートも作っています。

時間的にはこれで1時間半です。

絵には『ベース』が大切です。

これがそのベースに於ける第一段階です。

ここで一番心がけることは自然な三次元空間とモチーフの構造把握です。

私はそれらをひっくるめて“建て付け”と言っています。


② 次に“持ち色”による有彩色付けです。

20180128_155202切り取りのコピー2 60


あらかじめ3色好きな色を選んでおいて、その色から派生する中間色の明暗グラデーションを作っておくのです。

似ている色相ではなく、かなり異なった色相から選びます。

私は今回、クサカベのフレッシュピンクと、イエローオーカーと、サップグリーンを選びました。

そしてそれらの色に白と黒を適宜混ぜ合わせて渋い“中間色”を作ります。

20180202_224840 50

よく中間色って言うと、淡くて綺麗なシャーベットトーンを思い浮かべますが、中間色の概念はそのイメージとは異なります。

中間色の定義は、最も彩度の高い純色(ビビットトーン)に白と黒を足した色です。

ちなみに、純色に白だけを足していって作られる色は明清色といいます。 
この中にシャーベットトーンやパステルカラーのイメージも入ります。

純色に黒だけ足していった色は暗清色。

実際色を付けていく段階では明度は気にします。

でも最初のモノトーン描きで、明度は決まっているので、あとは感覚的に同じ明度の“持ち色”を当てはめていきます。

同じ明度の色は3種類くらいなので、仕事は早いです。

固有色には全くこだわりません。 ここが重要。 物の色を写そうとすると、迷走します。
(正確な色を“再現”しようと悪戦苦闘するからです。)

自分の好きな色味で楽しみながら進めていきます。

色数がそんなに無いので、大きな色面を塗るために、ここではペインティングナイフを多用します。

ナイフはナイフの質感になってしまい嫌われもしますが、あくまでトレーニングと割り切って仕事していきます。

大きなナイフで全体が大雑把に塗れたら、今度は小さなナイフで作業します。

本当に細かい仕事は出来ない代わりに、これくらい、といった限度が自ずと見えるのもメリット。

だいたい気に入るくらいまで描いて、この段階で『ベース第二段階』終了です。

ここまででちょうど3時間。

美大の試験ではちょうど昼休みに入る時間です。

この段階で重要なのはやはり固有色から離れる、という体験です。

物が絵の中で融解して色彩が響き合います。

セザンヌの絵には、こうした手法が顕著に見られます。

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プロフィール

キヌケン

Author:キヌケン
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横須賀は衣笠という町で絵の教室を主宰しております。
私自身は、東京藝術大学絵画科油画専攻(学部・大学院)に学びました。
個展、美術の祭典・東京展(上野)、および現代絵画シリウスというグループを結成して活動してます。

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